前回、Microsoft Word®のテンプレートがどのような特性を持っているか、実際に体験しながらご理解いただきました。
本稿の最終回であるその4では、テンプレートを有効に活用するための僕なりの考え方を提示していきたいと思います。
「Normal」テンプレートに直接手を入れない方がよいと思う3つの理由
巷では「~した方が(しない方が)よい9つの理由」とかいうフレーズが流行っているようですが、さすがに9つもあると途中で飽きちゃって何を読んでいたのかさえ忘れてしまったりします。僕だけでしょうか。
1つの理由だけで意志決定するのは心もとないものですが、異なる角度からの理由が2つもあれば十分だと思う今日この頃です。
がしかし、ここでは3つ書くことにします(笑)
「Normal」テンプレートは壊れやすい
「Normal」テンプレートは、どんな文書を開くときであっても必ず裏で一緒に開いています。
Microsoft Word®は、いつでも綺麗に起動して綺麗に終了してくれるわけではありません。刻一刻と変化するPCの状態の影響を受けて、突然に意図せず終了することもあります。
意図せず終了したMicrosoft Word®を再び起動したときに、「修復された文書」という言葉を目の当たりにしたことは、きっと誰にでもあることでしょう。
「Normal」テンプレートも例外ではありません。意図せず終了すれば「Normal」テンプレートだって壊れることがあります。
Microsoft Word®で使用するどんなファイルよりも、開いている時間が著しく長く、それだけ壊れるリスクに晒されているわけですから、いつ壊れたって不思議ではありません。
こうして人知れずに「Normal」テンプレートが破損していくと、Microsoft Word®の動作が不安定になることもあります。
「Normal」テンプレートを消したら安定するようになった、という話もよくあります。
そんな、いつ壊れてもおかしくないファイルに時間と労力をかけるという不毛なことは、誰でも避けたいと思うはずです。
動作が不安定になったときに、いつでもさくっと「Normal」テンプレートを消せるPCにしておきたいものです。
「標準」のものは残しておいた方がよい
「標準」がどれで「オレ様仕様」はどれか。この切り分けが明確なPCは、とても管理がしやすいです。
例えば、Web検索してヒントを探すとき。
どんなにMicrosoft Word®を極めたとしても、壁にぶつからない人はきっといないと思います。
Webに載っている情報は、ほぼ間違いなく「標準」を元に書かれた情報だと思いますが、「ここはオレ様仕様だから・・・うーん・・・」とかやりたくないですよね。
「自分は特別」と思うことは、いつだって物事の解決を妨げます。
少なくとも、「標準」でも起こる不具合なのか、「オレ様仕様」でしか起きない不具合なのか、このくらいの切り分けはできるPCにしておきたいものです。
専用テンプレートであれば配布できる
「Normal」テンプレートは、上記2つの理由から、あまり改変したくないものです。
それでも、「オレはNormalテンプレートを書き換えて使うんだ~!」という方もいらっしゃることでしょう。
そのポリシーを否定するつもりはありませんが、他者のポリシーを尊重して初めて、そのポリシーは尊重されるべきもの。
加工した「Normal」テンプレートを配布するということは、他者の一般的なポリシーを否定することになりますから、あまり得策ではありません。
専用テンプレートであれば、他者のポリシーを侵害することなく、配布して使用することができます。
専用テンプレートを使う目的
前項で、「Normal」テンプレートに手を加えるのではなく、専用テンプレートを用意することの意義をご理解いただいたところで、そもそも専用テンプレートを使う目的とは何か?これを明確にしておく必要があります。
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文書の形状を統一する
用紙サイズ、余白、ヘッダー・フッター、見出しや本文などのスタイルなど、同じ組織が発出する文書なのに、人によって形状がバラバラで統一感がない。
文書管理の観点からも、形状を統一することが望ましい。
文書を書くたびに、形状をどうしようかとか、いちいち悩む必要がなくなる。
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文書に最低限書いておくべき要素をもれなく記述できるようにする
よく書けた案内状なのに問合せ先が書かれていない、例えばマニュアルには目的を必ず明示しておきたい、など。
前回の「テンプレートに落書きする」を参考に、必要な要素をテンプレートに書きこんでおくことで、もれなく記述することができるようになる。
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文書を書くときに便利なマクロを使えるようにする
例えば、表の見出し行の下を二重線で統一するといったルールだとしたら、個別に設定してもらうよりもマクロを使用した方がより確実に統一できる。
そうした、あると便利なマクロを仕込んでおくことで、専用テンプレートを使用したすべての文書で利用することができる。
専用テンプレートの作成には計画が必要
その時々の形状で構わない性質の文書なら無計画でもよいのですが、常に更新して運用していくような文書の場合には特に、計画的である必要があります。
前回体験したとおり、テンプレートに設定されたページ設定やスタイル設定は、そのテンプレートから文書を新規作成したときにコピーされて、以降は各文書で維持されていきます。
つまり、文書を作ったあとでテンプレートを変更したとしても、変更した内容はすでに作った文書には適用されないんですね。
そのようなことから、実際に文書を作り出す前に、文書の形状をどうするべきか、テンプレートを作成する段階でじっくり検討する必要があるのです。
検討するポイントは、次のとおりです。
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Microsoft Word®のどのバージョンを使うか
Microsoft Word®は、バージョンによって、微妙な変化から目に見える変化まで、いろいろと違いがある。
大きなところで言えば、「.doc」か「.docx」かといったファイル形式の違い、同じ「.docx」でも明確にバージョンの違いがあったりする。
いろんな人がいろんなPCで更新していくような場合には、安定した運用のためにバージョンを統一しておく必要がある。
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ページ設定をどうするか
今どきの用紙サイズはほぼA4。
キングファイルに綴じるなら、穴を開ける部分を余白として残しておく必要がある。
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ヘッダー・フッターをどうするか
ボリュームのある文書であれば、ヘッダーに文書名を表示したり、フッターにページ番号を表示したりすることがある。
ヘッダー・フッターに何を表示するか、どの位置に表示するかなど。
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どのようなスタイルを用意するか
文書には大抵、階層構造が必要。
章、節、項とか、1.(1)ア.(ア)とか。
見出しを太字にしてみたり、注意書きを赤くしてみたり。
メリハリのある文書になるかどうかは、スタイルの設定によってすべて決まる。
段落スタイルと文字スタイルとを、うまく使い分けて活用する。
専用テンプレートを作ってみる
計画がイメージできたところで、専用テンプレートの作り方を説明します。
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メニューから〔ファイル〕→〔新規作成〕→〔白紙の文書〕を選択します。
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メニューから〔ファイル〕→〔名前を付けて保存〕を選択して〔名前を付けて保存〕ウィンドウを開きます。
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〔名前を付けて保存〕ウィンドウで〔ファイルの種類〕を〔Wordテンプレート〕にし、好きな名前を付けて保存します。
あとは、ページ設定やヘッダー・フッター、スタイル設定などを設定していって、最後に上書き保存するだけです。
なお、専用テンプレートを閉じたあとで、再び開くときには注意が必要です。
専用テンプレートは、ダブルクリックで開くと、専用テンプレートから新規作成された文書が開きます。
専用テンプレートそのものを開く場合には、専用テンプレートを右クリックして〔開く〕を選択して開きます。
専用テンプレートを置く場所
特にクイックアクセスツールバーやマクロなどの機能を仕込まない専用テンプレートであれば、極端にいえばどこに置いてもよいのですが、ネットワーク上に置くときには注意が必要です。
「Z:\」などのドライブ文字が割り当てられたネットワークドライブであればよいのですが、「\\192.168.xxx.xxx\」や「\\MyNetworkStorage\」のような「\\」から始まるネットワーク上に置くと、特に組織外へ文書を送ったときに「送ってもらった文書を開くとWordがフリーズするんですけど?」といった問い合わせを受ける可能性が高くなります。
実際にはフリーズしているのではなく、ネットワーク上の場所を探しに行ったまま長いこと帰ってこないだけなのですが、フリーズと断じても不思議ではないくらい長い時間待たされることになります。
クイックアクセスツールバーやマクロなどの機能を仕込んだ専用テンプレートの場合には、必ず、〔ユーザーテンプレート〕フォルダ、または、〔ワークグループテンプレート〕フォルダに置いて使用してください。
〔ユーザーテンプレート〕フォルダ、または、〔ワークグループテンプレート〕フォルダの場所については、次の手順で確認できます。
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メニューから〔ファイル〕→〔オプション〕を選択して〔Wordのオプション〕ウィンドウを開きます。
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〔Wordのオプション〕ウィンドウで、〔詳細設定〕ペインの〔全般〕グループにある〔ファイルの場所〕ボタンを押して、〔既定のフォルダー〕ウィンドウを開きます。
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〔既定のフォルダー〕ウィンドウに、設定されている〔ユーザーテンプレート〕フォルダと〔ワークグループテンプレート〕フォルダが表示されます。
なお、〔ワークグループテンプレート〕フォルダはあまり考えずとも好きな場所を設定できますが、先ほどと同じ理由で、ネットワーク上を指定するときには注意が必要です。
また、〔ユーザーテンプレート〕フォルダは不用意に変えないようにしましょう。
駆け足で説明してまいりましたが、以上で本稿は終わりになります。
スタイル設定にはいろいろとコツがあったりしますので、いずれ気が向いたときに、100%思いつきで書く日が来るかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。